【海外在住者インタビュー】何もなくて豊かな「カオハガン島」で自然と共存した子育てを|島に嫁いだ日本人女性2人に聞いてきました
2017年12月18日 海外在住日本人インタビューフィリピン
ロコタビは、海外在住日本人(ロコ)が旅のお手伝いをしてくれるサービスになります。観光案内や、ビジネス通訳、食事のアテンド、現地でのサポートなど、自分のしたいことを自由にロコにお願いできる場所です。この記事では、現在海外で活躍中の日本人の方に直接インタビューし、現地での事や海外に行くまでの経緯、日々の生活などをご紹介します。
今回インタビューを行ったのは、フィリピンの小さな島「カオハガン島」に嫁いだ二人の日本人女性です。セブ島から1時間弱に位置し、周りには透き通った海、見上げずとも目の前に広がる大空という贅沢なロケーションの島、カオハガン島。人口650人程、15分もあれば一周できるこの島で、島民、家族とともに子育てをしながら笑顔溢れる生活を送るお二人(ゆうこさん、よしえさん)にお話を聞いて来ました。
目次
1.「何もなくて豊かな」カオハガン島とは?
2.ヤドカリ生活から始まったカオハガンライフ
3.カオハガン島と日本の文化の違い
4.子供はみんなで育てる。島という大きな家族
5.「文化」と「自然」を守るためのプロジェクト
「何もなくて豊かな」カオハガン島とは?
「フィリピンで名が知れている日本人はいますか?」と尋ねると崎山克彦氏の名前が度々あがります。カオハガン島を語るとき、避けては通れない日本人です。30年ほど前、海を愛する彼は、美しい自然に囲まれたカオハガン島、そこで自然と共存しながら豊かに暮らす島民達と出会い、島を購入しました。後に彼はこの出会いを「神の采配」と語っています。観光地化が進み、経済発展の渦中にあるフィリピンのセブ島から小舟で1時間ほどのこの島は、豊かな海洋自然の恵みを分かち合い、太陽の動きに合わせて生きる対極的な暮らしが根付いています。「今」という時間が贅沢に流れるこの島では、時計を見る暇さえありません。カオハガン島は、近代的なモノや、インフラは整っていません。しかしその環境で、笑顔と対話が絶えないこの島は、「何もなくて豊かな島」と言われています。
崎山氏は、経済成長が推し進められるこの世界では、近い将来、価値観の大きな転換が求められると考えています。国家、経済自然や資源などとどう関わっていけば良いのか、自分たちの暮らしをどう築けば良いのか。将来、そのモデルになるようなコミニティをカオハガン島に創りたいと語っています。現在、島の運営は引退され、この島に嫁いだ二人の日本人女性が引き継いでいます。それが今回お話をお伺いした、よしえさんとゆうこさんです。
カオハガン島概要→ カオハガン島オフィシャルサイト
ヤドカリ生活から始まったカオハガン島ライフ
お二人とも、島民とご結婚されてお子さんがいらっしゃいますが、そもそもなぜカオハガン島に移住されたんですか?
よしえさん:もともと神戸の雑貨店で働いていました。そこで、品物として扱っていた雑貨の一つがカオハガンキルトでした。お客さんに提供する中で、商品について知る必要があったのと、単純に島民がキルトを作っている写真をみて興味が湧きました。そこで、商品を見に訪れたのが最初のきっかけでした。それから凄く気に入って、何度か島に来ていましたが、仕事に追われ、時はせわしなく過ぎていきました。そんな時、崎山と日本で会う機会があって、想いをぶつけたんです。すると、「それなら島に住んで良いよ」と許可を得られたんです。すぐに、その時日本でやっていたヨガ教室も閉めて、周りの環境も全て削ぎ落とし、カオハガンに住み始めました。
ゆうこさん:私は、就職活動をしていた時、日本社会に大きな違和感を覚え、もっと異なる価値観で動いている社会を見てみたいと思うようになっていました。同時に、日本社会に適応できなかった自分に対して、自信も失っていて。そんな時にスタディツアーで訪れたのが、カオハガン島でした。初めて訪れた時、子供達が歩み寄って来て、どこから来たかも分からない自分に対し、この上ない愛で接してくれました。無意識に涙がこぼれ落ちたのを覚えています。その時、愛で出来上がっているこのコミニティを知りたくて、何度も訪れ、卒論も書きました。色々と調べていくうちに、住まないと分からない!と感じ、どれくらい住むかは考えず住み始めたのがきっかけです。
お二人とも全く違う経緯でこの島にたどり着いたんですね。どんな生活が始まったんですか?
よしえさん:住み始めは家もないので、空いているロッジがあれば借りたり、いろんな場所で寝ていました(笑)。なので、島に訪れる日本人への対応をしつつ、島ではヤドカリ生活をしているという感じですね。
ゆうこさん:私も初めはヤドカリ生活です(笑)それから、宿の運営をしたり、村との調整を探り探り行なっていきました。今では、二人とも島の運営を日々しています。
カオハガン島と日本の文化の違いを教えてください
日本との文化的な違いは感じますか?
ゆうこさん:カオハガンの島民は今を生きる人たちなんです。島民がよく言う冗談が「日本人は問題ない心配ある。カオハガンは問題ある心配ない」。日本人は、問題がないのになぜか疲弊している。それに対して、島民は問題があったとしても笑っていようという文化なんです。1日1日笑って過ごせばそれで良いじゃない!って。
よしえさん:なんでしょう…。最近気づいたのが、足の裏の扱いが違うことですね(笑)。こっちは足の裏は一番汚いものを扱う領域として捉えています。可愛いスタッフの女の子もムカデっぽいのを足の裏で「がん!」っていってました。雑巾掛けも全部足でやります。「最終的に海で洗えば良いじゃん」と言う感じですね。確かに、毎回海で洗っているので、むしろかなり綺麗。爪も黒い垢とかが溜まってなくていつも清潔な状態なんです。
子供はみんなで育てる。島という大きな家族
お二人とも、お子さんが1歳ほどですが、カオハガンでの子育てとはどういったものなのでしょうか?
ゆうこさん:島のみんなで子供を育てていきます。それぞれ家族がいますが、島という一つの家族のようなコミニティなので、みんなが子供たちを大切に扱ってくれるんです。多少目を離していても、たくさんの人たちが愛情を持って接してくれるので、安心です。だから、子供自身も大切に扱われていることを感覚的に理解して育っていくので、人を信頼し、自分は大切な存在であるという自己肯定感も養われていると思いますね。
よしえさん:良い意味で、こんなにも子育てを楽にできるとは思っていませんでした。みんなで子供を育てられるのは本当に嬉しいことです。
それは、親にとっても良い環境ですね。逆に大変なことはありますか?
よしえさん:なんでしょうね…。ビタミン剤を子供に直接あげようとすることですかね。昔は子育てをする上で十分な栄養がなかったので、ビタミン剤を直接飲ませた方が良いという考えがありました。親がビタミンをしっかりとって、授乳で栄養を与えるという考えがあまりなかったんです。もともと子供を亡くしてきた世代なので、真剣に考えての行動だったと思いますが、私たちは自分たちがしっかりと栄養をとって、授乳で栄養を与えるようにしています。
お二人は、お子さんにはどんな風に育って欲しいですか?
よしえさん:いつも、寝る前に「元気で優しく育ってくれればそれで良いからね」といっています。島で生まれ育って、島の生活に順応している子供なので、できればここで長く育ってくれれば良いですね。せっかく素晴らしい環境で育った感性があるから、大きくなってどこかに行くことになっても、それを消さないよう生かして欲しいなと思います。
ゆうこさん:自分の存在は大切なもので、かつ、人は信用していいということを理解して育てば、自分の人生は自分で創っていくと思っています。その上でここは最高の環境です。必要なものは全て揃っています。ちなみに私も寝る前に「生まれて来てくれて、ありがとう」と言っています(笑)
ここでの子育て経験から、日本の子育て環境に思う事はありますか?
よしえさん:子供は厄介者ではなく、幸せを周りに配ってくれることを考えて欲しいです。都会だとみんなで子供を育てるのは難しい環境があります。それでも子供を祖父母などに預ける事がありますよね。その時に、迷惑をかけてしまうと思ってはいけないと思います。子育ては難しい一面もありますが、子供はいつでも人を幸せにする生き物です。私も少し前まで、祖父母に預ける際は「大変な思いをさせてごめん」と思っていました。しかし、祖父母は子供と一緒にいる事を楽しんでるんですよね。だからこそ、預けることに罪悪感を持たないことは大切ですし、気持ちも楽になると思います。
ゆうこさん:日本にも「子供は宝」という言葉があるくらいですからね。島の人は、その人自身が心地よい状態であるかにすごい敏感なんです。これは子育てもそうで、子供と同様にお母さんも心地よい状態でいる必要があるんです。あとは、正しいことと良いことは違うということを伝えたいですね。世の中では、虫歯菌が移るから小さな子供にキスをするのは正しくないと言われるけど、もしお母さんと子供がキスをすることでそれぞれが幸せで、良いことだと思うなら、してもいいのではないかと思います。子どもの心は、周りからの愛を感じられてこそ育つのではないかと思います。きっと正解はないので、それぞれの親が、情報に踊らされることなく、自分の子どもが幸せで気持ちよくいられることを丁寧に考えられるようになったらいいな、と願っています。
「文化」と「自然」を守るためのプロジェクト
先日、お二人はカオハガン島の文化を残し続けるために、伝統的な帆舟の制作や、サンクチュアリー(聖域)と呼ばれる美しい熱帯珊瑚礁保護区を、守るためにクラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げました。その目的を少しだけ、お聞きしました。2018年1月20日まで支援が可能なので、ぜひ興味のある方は見てみてください。
プロジェクトページ: https://camp-fire.jp/projects/view/51308
(引用)
島の綺麗なビーチを目当てに毎日宿泊、日帰りも含めた観光客が国内、海外から多くいらっしゃいますが、実はサンクチュアリー(聖域)と呼ばれる素晴らしい熱帯珊瑚礁保護区も存在します。この保護区は島民により管理されており、違法なダイナマイト漁などで傷ついた漁礁の再生と生態系の保護を目的にしています。
また周辺にある他の保護区では観光客向けに魚が餌付けされており、海に入ると人間慣れした餌目当ての魚が寄って来ますが、このカオハガンの保護区では餌付けをせず、近隣では唯一自然な状態で保護をしています。このような形で熱帯珊瑚礁保護区を守ることで生物の多様性の維持に貢献し、また自然と共にあるライフスタイルを送っている島民の暮らしを守ることにもつながっています。ところが、残念なことに、現在この保護区のブイや監視小屋が劣化のため破損していることから、保護区の適切な保護管理が難しいという現実もあります。
詳しい内容や、目的などはプロジェクトページに記載されているので、そこには書ききれなかった想いを少し教えてください
よしえさん:文化や伝統が残り続けているカオハガン島でも、少しずつ失われていくものが出ています。その一つが帆舟です。昔は風の力だけを借りて動かしていた帆舟が当たり前でしたが、現在はありません。私の旦那も小さい頃に乗ったきりで、使い方も覚えていないという状態なんです。エンジンという便利な道具が入ったことで、伝統的な乗り物が失われていった現実があります。今まであったものが無くなっていくのは寂しいですし、便利になっていくことでこの素晴らしい環境が変化していくことは悲しいことです。だからこそ、復活させて訪れる人々にも体験をシェアしていきたいという想いがあります。
ゆうこさん:私たちは、経済発展していく国から、この地に魅力を感じて移り住みました。便利なモノが増え、自然との調和を重んじる世界が薄れ、便利なモノが増えていった環境が想像できます。しかし、島民は良くも悪くも「今を楽しく生きる」ことを大切にしているので、自然との共存が当たり前の現在の生活が、少しずつ便利なモノによって侵食されていくことをあまり想像しません。そういった意味でも、このプロジェクトは変化を想像できる私たちの役目でもあるような気がします。
日本から移り住んだ島民だからこその目線ですね
ゆうこさん:私たちも「島民と同じにならないといけないのかな」と悩んだ時期がありました。しかし、私たちは私たちらしく、自分たちができることをしていくことにしたんです。それが今回のようなプロジェクトに繋がりました。私たちの子供が大きくなった時に、カオハガン島の文化や環境がしっかりと残っている状態でありたいと思っています。島に受け入れてもらった立場なので、「受け入れてよかった」と少しでも思ってもらえるように貢献していきたいです。
文化と自然の保護を目的とした今回のプロジェクト、応援しています。
プロジェクトページ: https://camp-fire.jp/projects/view/51308
ロコタビの印象を教えてください
最後に、ロコタビの印象を教えてください。
ゆうこさん:素敵なサービスだと思います。興味があって、色々みたんですが、現状カオハガン島のインターネット環境は悪いので、ロコとして活動するのには少し支障が出そうです。残念…
そうですね(笑)ネットがよくなったらぜひ「エリア申請」お待ちしています。ロコタビに「カオハガン」のエリアができることを心待ちにしています。本日は、貴重なお話をありがとうございました!
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