自分の好きな人と好きな場所で好きな事をやって暮らしたい!夢がリオで全部叶ったチグサさん
2016年7月22日 海外在住日本人インタビューブラジル
ロコタビは海外在住日本人が輝ける場所を提供する「日本人のための海外プラットフォーム」。
この記事では、現在海外で活躍中の日本人の方に直接インタビューし、現地での事や海外に行くまでの経緯、日々の生活などをご紹介します。
今回インタビューさせて頂くのは、ブラジルのリオ在住3年目のチグサさんです。
チグサさんはリオのファベーラでヒッピーの旦那さんと可愛い娘さんと幸せに暮らしながら、ロコとしてガイドや通訳のお仕事をしたり、マクラメのアクセサリーを制作したり、ファベーラやヒッピーについての研究もしているという、とても興味深い方です。
さっそくお話を聞いてみたいと思います。
ブラジルのリオに住むことになった経緯を教えてください
大学院時代にインターンとしてウルグアイのモンテビデオにある国際機関で働き、卒業後はボリビアで青年海外協力隊として2年間活動していました。協力隊の活動を終えた時、次の進路に悩んでいました。旅行をしながらゆっくり考えようと思い、2012年7月から2ヶ月間ブラジルを旅しました。
ブラジルを南から北まで縦断旅行している中で、今の旦那と出会いました。彼は、リオのイパネマビーチでマクラメのアクセサリーを作って販売していました。結果的に旦那に引っ張られてリオに住む事になりましたが、私自身リオを訪れた時に「いつかこの街に住んでみたいな。」と思っていたのと、「2016年にはリオで南米初のオリンピックが開催されるので、その歴史的なイベントの時にリオに居たいな。」と思っていましたので、いろんな偶然が重なったのだと思います。
ボリビアではどのようなことをされていたのですか?
2010年の6月から2012年の6月まで、ボリビア南部のタリハという町でJICAの協力隊員として井戸を掘るプロジェクトで活動をしていました。掘った井戸を住民自身で維持管理する事が重要なので、住民が水利用料金を支払うための副収入を得られるようなコミュニティープロジェクトを提案したりしていました。
その他にも環境教育や衛生啓発、社会経済調査などをボリビア人の同僚と一緒にしていました。タリハはアルゼンチンとパラグアイの国境に接している県で、標高が1900メートルくらいあります。一年中春のような気候でカラッとしていて、とても住みやすい所でした。ワインの産地でもあるので、アルゼンチンの牛肉と一緒にタリハ産の美味しいワインをよく飲んでいましたね。
ボリビアでの活動終了後、旅先にブラジルを選んだ理由を教えてください。
ブラジルは憧れの国でした。子供の頃からTVで見るカーニバルの派手なダンサーの衣装にも憧れていましたし、経済的にもまだ発展途上国で治安も良いとは言えない国だけれど、人々はとても明るいですよね。「そんなブラジル人に会ってみたいな。」という思いがずっとありました。ラテンの人達への憧れが昔からあったんですね。
ウルグアイやボリビアなど南米で活動している間に、南米でも国民性は全然違うという事に気がつきました。ブラジル、特にリオは底抜けに明るい気質を持った人が多い気がします。
2ヶ月間のブラジル旅はどうでしたか?
ブラジル入国にはビザが必要なので、まずはビザ取得の勝手が分かっていたウルグアイのモンテビデオでビザを取得し、バスで25時間かけてブラジルのポルトアレグレへ行きました。その後更に20時間以上かけてリオに移動しました。リオはとにかく街の雰囲気が気に入りましたね。この「自然と街と人の近さ」というのは他には無いな、と。
その後ミナス・ジェライスのベロオリゾンテを経由し、サルバドール、ナタル、フォルタレザ、サン・ミゲル・ド・コストーゾという小さな漁村、バックパッカーの聖地と言われている砂丘の街ジェリコアコアラ、サンタレン、ベレンですね。アマゾンの河口にあるマラジョー島に行きました。船でサンタレンまで行き、また船でベレンまで戻り。その後ベレンからサンパウロに飛行機で移動しました。
旅の中で特に印象に残っていること
たくさんありますが、サン・ミゲル・ド・コストーゾという小さな漁村で過ごした時間は特別でしたね。漁村なので船が浜に繋がれていて、ビーチはとても綺麗でほとんど人もいなかったので独り占め状態でした。
泊めてくれた宿の奥さんは画家のシングルマザーで、子供を自然豊かなところで育てたいという思いからサンパウロを離れこの小さな漁村に移住し、雑貨屋さんを営んでいました。地元の素材を使って手づくりされた民芸品で飾られた部屋はとても温かみを感じて、ホッとしました。ある日、奥さんがバケツいっぱいにエビを買ってきて、ムケカというココナッツカレーのようなブラジルの家庭料理を作ってくれたのも嬉しかったです。私もこんな風に自然のあるところで子供を育てて暮らしたいなと思いました。
あと、マラジョー島で見た景色もとても心に残っていますね。マラジョー島は砂で出来ていて形が変わる動く島なんですけど、水牛がいて文化も独特でした。アマゾン川から流れてくる植物の種が、マラジョー島に着く頃には芽を出しているんですよ。なんかそういうのいいな、って。そういう生き方をしてもいいよね、と思いました。
それからサルバドールはすごく良いところですよ!ブラジルの中でも特にオススメなので機会があれば是非行って欲しいところです。アフリカの文化が強く、食文化も独特ですし、カンドンブレというアフリカから持ち込まれた宗教の儀式やカポエイラを間近で見る事が出来たりと、とても強く印象に残っています。
ブラジルを旅した後はどちらへ?
旅をしている間に「ブラジルで働きたいな」と思い始めて、サンパウロで日本人コミュニティを頼って仕事を探しましたが、ビザが無いのでなかなか難しくて。メキシコのカンクンで旅行関係の仕事を見つけたので一旦日本に帰った後、カンクンへ行きました。
カンクンでのお仕事はどうでしたか?
ガイドっていう仕事がやっぱり良いなと思いましたね。直接お客様と関わる仕事というのはとても刺激的というか、いろんな方と出会えるので楽しかったです。その上、自分が勉強した中南米に関する知識や経験、自分の生活、オススメのレストラン情報などが全て仕事に活かせるので「これ向いてるわ!私、ガイド向いてるわ!」と思いましたね。将来的にブラジルでもガイドの仕事が出来るかもしれない、と思いました。なので、ブラジルに来てから、リオデジャネイロ州公認の観光情報案内士という資格を取りました。
ブラジルで働くという夢、叶っていますね!
そうなんです!叶っているんです。私、気がついたんですけど、リオで全部夢が叶ったんです。自分の好きな人と好きな場所で好きな事をやって暮らしたかったんですけど、それが全部叶っちゃったんですよね、リオで。その事自体にとても感動していますし、今後はこの恩を周りの人に返したいと思っています。「人生の第二ステージの土地」として、ここからまたスタートしたいと思っています。
現在の生活について教えてください
今は、一歳半の娘の子育てが生活の大部分を占めています。小さいうちに親自身でしっかり躾をする、親の愛情を与える事がすごく大事だと思うので仕事は抑え気味にしています。ロコタビでお問い合わせがある時にガイドとしてリオをご案内したり、ファベーラ・ツアーをしたり、リオの情報を提供するなど自分の出来ることをお手伝いさせて頂いています。あとは、旦那がマクラメ・アクセサリーを製作販売しているので、旦那に習いながらマクラメ・アクセサリーを作っています。
ヒッピー文化に興味を持ったきっかけは
ボリビアにサマイパタという風光明媚な村があるんですけど。そこにヒッピーの若者たちが住んでいます。私、彼らの思想を知らなかったんですよね。タイダイ染めでサイケデリックな服装を身にまとって「ラヴ&ピース」みたいに言っているだけだと思っていたんです。しかしヒッピーについてよく調べてみると、「みんなが幸せに生きていけるような世界を作っていこう。そのために自分達が動こう。何かを変えよう。」としている人達なんですね。中南米の人達は仕事を得る事も簡単ではないので、私の旦那もそうですがアクセサリーを作って売ったり、自分が出来る事や自分が作るものだけで生きて行くという、とてもシンプルな生活なんです。私自身もヒッピーに対して偏見があったからこそだと思うのですが、ヒッピーの思想であったりヒッピーの事をもっと日本にいる人達に伝えたいと思っています。日本人にも、もともとそういう思想はあったと思うんです。例えば京都の龍安寺の蹲(つくばい)で「我只足るを知る」という言葉がありますが、日本人はその精神を忘れてしまったのかなと思いますね。
多くの日本人にとって『ファベーラ』は「危ない場所」「近寄ってはいけない場所」というイメージがあります
ファベーラの中で泥棒はいないんですよ。泥棒をする人はいないんです。治安が安定したソナスールのファベーラでもギャングの活動というのはアンダーグラウンドで今もあります。ただ彼らと住民の関係というのは不介入主義と言って、相手のビジネスを邪魔しない限りは相手を尊重し、共存しているのです。ファベーラの中を実際に歩いてみるとその人たちの生活が見えてきます。自分自身の中にある偏見や価値観が客観化されて感じられるでしょう。異文化社会に入り込むことによる「バグ経験」は、自分自身や日本を見つめ直す貴重な体験になるはずです。
実際に私もファベーラを案内して頂きましたが、危ないという雰囲気は感じませんでした。むしろ、ビジターの私にまで明るく声をかけてくださる方もいて、温かい人が多いコミュニティだと感じました。
そうですね。ご案内するのは私が住んでいるファベーラなのでアミーゴがたくさんいます。みなさん幸せに暮らしていますよ!ソナスールのファベーラは政府が介入しているので治安も比較的安定しており、不動産価格が高騰しているエリアでもあるんです。
ファベーラ・ツアーは万が一危険な事が予想される場合や安全確保が出来ないと思われる場合、実施する事ができません。安全確認・治安の状況は細かく追うようにしています。
リオの好きなところは「人」!
リオに住んでいる人たちの事をカリオカと呼ぶのですが、カリオカは未来の事を心配したり、過去の事をグチグチ悩んだりすることを良しとしないんですね。今ここにいる自分がどういう風に一日・一瞬を楽しむかっていう事にものすごく重点を置いていて、そういう姿勢は本当に勉強になりますね。それとリオでは「良い人」が「すごーく良い人」なんです。今、鍼灸治療に通っているんですけど、鍼治療をやっている方はもう10年くらい毎週金曜日にファベーラに住んでいる貧困層向けの人たちに無料で治療を施しているんですね。志が強くないとなかなか続けられない事ですよね。ここでは「共有する文化」というのがあって、自分の持っている術や持っているものを困っている人達に分け与えるという気持ちが強いんです。
リオのコトを教えてください
ブラジルは日系の移民が多いので、日本の文化が深いところまで根付いています。日本人に対するブラジル人の好感度はとても高く、信用されていますね。それはやはり移民で日本から来た方達が頑張ったおかげだと思います。土地を耕し農業で国(ブラジル)に貢献したのでしょうね。
リオで暮らす上で心得ておいた方がいい事
リオだけでなく南米はアミーゴ社会です。アミーゴ=友達ですね。アミーゴにならないと仕事もなにもかも上手く行かないんです。絶対に上手く行かないんですね。アミーゴの逆はエネミーゴといって「敵」なんですね。アミーゴがエネミーゴになる事もあります。アミーゴの関係がしっかり築かれていないと自分自身に災いが返ってくるというか、やりたいことが全然進められないんです。仕事をする場合でも、タクシーに乗る場合でも同じです。信頼関係ができてないと全然ダメ。例え時間をかけても、お金をかけても上手く行かないですね。
ロコタビについて教えてください
実際にロコとして活動されてみていかがですか
ロコタビを通して本当にたくさんのご縁を頂いてます。
リオは日本から遠いので、結構特殊な目的を持って来る方が多い気がします。ブラジル音楽をやっている方、ファベーラについてリサーチしたい漫画家さん、他の国に比べてブラジルの手話は進んでいるので手話の状況を知りたい方など様々です。そんな方々のお手伝いが出来るのはとても嬉しいですね。
あと、ロコタビでお問い合わせ頂いた方とのご縁が繋がって、オリンピックで働くことになりました!オリンピックのジャパン・ハウスでローカル・コーディネーターとしてお手伝いさせて頂く予定です。リオのこの風土で日本の仕事をするのは結構大変だと思うので、出来るだけ彼らの仕事がスムーズに進むように、なるべく文化の摩擦を減らせるように仕事をしたいと思います。
近い将来やりたい事や次の目標などはありますか?
今二つの道で迷っています。ひとつは本格的にガイドとして活動するために、国の定めたガイドの免許を取ってガイドとして独立すること。もうひとつは世界の経済に対する問題意識があるので、国際協力の世界に戻ることです。
最後に、リオに旅行で来る方に何かアドバイスをお願いします
リオの人たちがリオを楽しんでいるようにリオを旅行して欲しいな、と思いますね。ビーチだったり、夜遊びだったり、音楽を聴いたり、植物園に行ってのんびりしたりだとか。リオに住んでいる人たちがこの街を好きな理由を分かってもらって帰ってもらえたら嬉しいですね。
いかがでしたか?
リオで全ての夢を叶えたチグサさん。ヒッピー文化やファベーラの生活の様子をチグサさんから直接聞いてみたいと思いませんか?普通の観光では得られない体験をしたい方、ブラジルやリオのことを深く知りたい方はチグサさんにガイドをお願いしてみてはいかがでしょうか?
チグサさんBlog: Rio de Hippie
http://riodehippie.blogspot.com.br
Website:
http://riodehippie.com
チグサさんのプロフィール
ボン・ジーア!リオデジャネイロに在住3年目、一児の母です。今まで、ウルグアイ、ボリビア、メキシコにて、国際協力業界、旅行業界で働き、現在は、娘(2014年10月生)の世話に試行錯誤しつつ、コロンビア人アルテサノ(手工芸作家)の夫と二人三脚で、マクラメアクセサリーを製作、販売しています。また、ヒッピーやファベーラの社会調査をして本の出版を目指しています。
ファベーラ、セントロ、ボサノヴァゆかりのイパネマ散策など、日葡通訳案内いたします。
ビジネスでお越しの方で、社会調査、市場調査等、現地サポート・コーディネートをお探しの方も、まずは気軽にご相談ください。
[取材・編集:三谷めぐみ]