【ロコインタビュー】「深セン」と「ものづくり」をキーワードに事業を展開中。電気街の案内なら、任せてください。<中国・深セン在住 Suzukyさん>
2020年2月7日 ロコ活深セン海外在住日本人インタビュー中国
深セン・華強北電気街の建物内をアテンド。
人生の転機となったロコタビとの出会い
|中国に住むキッカケは何だったんですか。
2011年当時、勤めていたシステムインテグレーターの会社が広東省の仏山市に現地法人をつくることになった際、その立ち上げを手伝い、そのまま3年ほど駐在になりました。それ以前にも個人旅行で訪中したことがあり、「これが高度経済成長なんだな」と中国の勢いを肌で感じていました。ちょうど仕事にややマンネリ感を覚えた時期でもあり、躊躇なく志願したのを覚えています。
|その後、会社を辞められて中国で起業されたのですか?
はい、実は勤めていた会社から日本に戻るように言われまして。しかし、自分としては中国に可能性を感じていたので、中国に残ってビジネスを始めようと決心しました。
そしてまずは香港で会社を作り、その後は広州を拠点に活動をしていたのですが、何をやっても上手くいかず。次に深セン在住の中国人のパートナーを見つけて深センに移ったものの、事業は失敗。ようやく腹をくくって深センで一人で再起を図ることにしたのです。
深セン福田区にある華強北電気街のメインストリートとその周辺風景。
|お住まいの深センはどのような場所なのでしょうか。
日本では考えられませんが、北京、上海、広州など中国の昔ながらの大都市には、外から来た人に対する差別があります。同じ中国人であってもです。しかし「深センに来れば深セン人」との言葉があるようにここは移民の街で、差別がほとんどありません。それは外国人に対しても同様です。
また最近40年くらいで急速に発展したので、まだ地元民と呼ばれる人がほぼおらず、人々の関係もフラット。ビジネスもゴマすりやコネなどより自分の才能と努力によって立身出世できるような土台があります。若い人が多く、既得権益層も育っていないので、新しい技術やサービスが浸透するスピードが速い。キャッシュレス、シェアリングエコノミー、電動のバスやタクシー、生体認証系のサービスは、中国では深センでいち早く導入され、浸透しました。
大都市ではあるので物価はやや高めですが、基本的にオープンで自由な雰囲気があります。収入源さえ確保できれば暮らしやすい街だと思います。
華強北電気街のある建物内部の様子。
自らの事業がロコの仕事と相互補完
|現在の仕事内容を教えてください。
ロコタビには個人で登録(Suzukyさんのロコページ)しており、通訳だけでなく市内や問屋街へのアテンド、団体視察の企画や手配などの依頼をいただくことが多いです。また同時にアイデアポートという会社を経営。香港と深センに法人があり、京都に駐在員事務所を設けています。
アイデアポートの主な事業内容は3つです。一つは会社名と同じ「Ideaport」ブランドで、ロコタビと同様、日本の顧客向けにビジネス通訳、団体視察の手配やコーディネート、他にも工場リサーチ等の中国ビジネスのサポート業務を手掛けています。2つ目は「Ideagear」のブランド名で、IoTプロトタイピング(ハードウェア開発)とその後の小ロット生産までを、こちらも日本の顧客向けに支援。そして3つ目は日本のデザイン会社数社と一緒に立ち上げた「TERASU」のブランド名で、中国の電子製品や小物家電、家具などのメーカー向けに、プロダクトデザイン(製品の外観デザイン)のコンサルティングをしています。
さらに2019年の11月に「ideaZero」という新ブランドを立ち上げました。これはたまたまスタッフにイラストを描くのが得意な人がいたので、キャラクターを描いてもらい、それをモチーフにまずはキーホルダーを製作。“世界の工場”である中国のメリットを活用し、このキャラクターを使ったビジネスの展開を模索中です。また、深セン通訳ドットコム、深センコネファクトリー、華強北オタクドットコムなど深セン関係のサイトも運営しています。
このようにいろいろやっているのですが、基本は深センとものづくりに関係することが主体。そしていずれもロコタビの仕事に大いに役立っていると思います。
アイデアポートの事務所がある、華強北インターナショナルメーカーセンターのロビー。
事務所の入居初日、日本人ということで中国メディアからも注目され、取材を受けた。
悔しさをバネにロコの仕事に全力投球
|ロコタビには、どのような経緯で参加されたのですか。
前述のとおり、起業してしばらくは失敗に失敗を重ねて痛い目に遭いました。最悪な状況の中、知人の社長が「深センで通訳を頼むとロクな人が来ない」と言っていたことが契機になりました。確かに深センは、それまで住んでいた広州・香港と比べ、日系企業も日本人も日本語学科のある大学も少ない。一方、深センでの日本企業によるビジネスはますます発展中なので、その分、深センでの日本人による中国語通訳は需要がありそうだなと思ったのです。
ただ、最初はどのようにお客様を見つければいいかわかりませんでした。それに当時は中国在住5年目で、ようやくビジネスで中国語が使えるようになった頃。中国で働きながら語学学校に通った経験はあったものの、正規の留学や学校で中国語を専攻したわけでもなく、通訳も仕事としてやったことはありません。ですから、最初は「無理だ」と躊躇してしまって。
とはいえ時間だけはあったので、とりあえずやれるものは何でもやろうと決意し、2016年夏にあるクラウドソーシングサービスに登録。そこで「10月に香港と広州の展示会に行くので通訳を探している」というクライアントを見つけ、英語はほとんど使わず、初めて中国語で通訳をしました。始めは不安でしたが、「ジェスチャーでも何でも使って、とにかくお客様に迷惑をかけないようにしよう」と心に決め、取り組んで何とか成功しました。これが2016年の10月下旬のことです。
これで少し自信がついたところ、その直後にロコタビのネット広告を偶然発見。10月31日に深センロコとして登録させていただきました。
電気街のメインストリートで視察参加者を案内中。
|その後、ロコタビではどのような仕事をされましたか。
登録した時点では深センのロコは20人を切っていました(2020年1月時点では331人)。ほぼ仕事をしていない状態だったこともあり、登録後に依頼のあった仕事すべてに対応した結果、12月末には深センのロコとして2番目に表示されることに。この時に初めて評価などの基準で表示順が入れ替わることを発見。ユーザーさんのおかげで翌2017年の頭にはついに1番目になりました。
2016年の年末にテレビ番組で深センが紹介されたこともあって2017年、2018年と徐々に日本での深センの認知度がアップ。1位の人にお願いしたいという人間心理が働いたこともあってか、依頼数が増加。そのおかげで元々は工場での通訳がほとんどだった依頼が、市内のアテンドや視察といったものまで頂くようになりました。
同時にそれらの仕事を通じ、深センに居ながら日本全国から来る方々と知り合いになるチャンスに恵まれました。その方々はほとんどが社長さんなどビジネス上で決定権のある方だったため、その後、さらに幅広い案件についても相談を受ける機会が多くなって。結果、深センにも法人を設立する決断ができたり、ビジネスの進展とともに仲間も現在進行形で増えています。
アイデアポートの事務所内で視察参加者に説明を行う。
ビジネスの最前線に立ち会えるのが刺激的
|ロコタビでロコとして仕事をする楽しさや魅力にはどのようなものがありますか。
やはり、深センに居ながら、日本の全国津々浦々から来る人たちとお会いできることでしょうか。
同じ日本人でも地域によって性格の違いを感じますね。例えば、関東の人は理路整然としていて、関西の人は交渉上手で義理人情に厚く、九州の人はアグレッシブ。視察でいろいろな場所にお連れすると、九州をはじめ西日本の方は、明らかにリアクションが大きいです(笑)。
あとユーザーさんは会社経営者など、自分の考えをきちんと持ってらっしゃる方が大部分です。そういう方たちと共に過ごし、話しをするといろいろな気づきがあり、とても勉強になります。また通訳としてでなければ行けなかったであろう場所にも訪れることができたりと、貴重な経験も多い。本当にやりがいのある、恵まれた仕事だと思います。
華強北インターナショナルメーカーセンター内には実験室が。はんだごてなども揃う。
株式会社トラベロコの新サービス誕生のきっかけにも
|新サービスの「トラベロコフォト」も鈴木さんのおかげでスタートしたとか。
プラザクリエイトの大島康広社長が、深センで私のサービスを2018年7月にご利用後、「トラベロコは面白いサービスだ」と椎谷社長に連絡。そこから提携に至り、「トラベロコフォト」が誕生したとは聞いています。ただ、私はキッカケの一つかもしれませんが、正直まったく関わっていないため詳しいことはよくわかりません。少しでもお役に立ててよかったです。
|その時の依頼はどのようなものだったのですか。
私が担当させていただいた大島社長の依頼は、デザイン会社での商談の通訳でした。しかし朝の打ち合わせの際にプラザクリエイトさんが写真関連の会社だとわかったため、当初の予定にはなかった、ユニークな証明写真ボックスなどを製作・運営している別の視察先も急遽手配させていただきました。
帰国後、「商品の調達先での通訳のみならず、アドバイスもとても参考になりました。個人的には、今回お支払いした一日の金額の倍以上の価値のある方だと思いました」とのコメントを頂き、大変嬉しかったです。
これからも“ゼロイチ”の挑戦を続けたい
|今後はどのような展開を考えていますか。
ものづくりに関連する日中ビジネスを柱に、自分の直感や興味に従い、さまざまな事業にチャレンジしたいですね。まずは、例えば日本から中国まで伸びる線(その中心は関西圏と広東省)が木の幹だとすれば、その幹を太くすることに注力し、いずれはそこから枝が分かれるように他の国や地域にも展開できればと考えています。
京都駐在員事務所でセミナー参加者に事業内容を説明。
|ロコタビでこれから挑戦してみたいことはありますか。
ロコタビさんがプラザクリエイトさんと提携して「トラベロコフォト」が生まれたように、個人でなく会社としても何かロコタビさんのためになるような、そのうえでユーザーの方や他のロコの皆さんのお役に立てるようなサービスを一緒に作らせていただければと思っています。
ただ、プラザクリエイトさんは写真という大きな強みがあります。一方、弊社の強みは何か……例えば、現在、部品が集積する深セン電気街の地の利を活用し、マイコンボードを使った短期間のハードウェアのワークショップを開催させていただいています。既存の枠組の延長線上で考えるなら、そういった海外研修などはありかもしれません。
手軽なところから始めるなら、「深セン一日視察」ですね。こちらは先日、椎谷社長にお会いした際にも提案を差し上げました。
あと、ロコタビさんと逆になってしまいますが、日本の何かを外国人に紹介するというビジネスにも興味があります。この場合は、既存のロコの皆さんにそのPRをお手伝いいただけるかもしれません。とにかく、私の場合はこういうことを言い出したらキリがないのでこの辺で(笑)。
いずれにせよ、両社が一緒にやりたいと自然と思える「何か」ができてくる日が来ることを信じ、人材育成やチーム作りに力を入れ、地道に努力を重ねていくつもりです。
お客様からオーダーを受けて電子基板を設計、プロトタイプを製作するサービスも実施。
|最後にロコタビについて一言、メッセージをお願いします。
私は人生で一番苦しいときにたまたまロコタビと出会い、自分自身が変わりました。私のようにロコタビでの出会いをキッカケに人生が変わった方が、ほかにもたくさんいらっしゃると思います。
これから新たにロコタビにロコとして登録される方、ユーザーとして使われる方にぜひお伝えしたいのは、単なるサービスの提供・利用という視点だけで相手を選ぶのではなく、新たな気づきや経験という角度からも吟味し、ロコタビのサービスをフル活用していただきたいということ。私はいつも、ロコタビを通じた「新たな出会い」に感謝しています。
「問屋街オタク」を自称するSuzukyさんの著書
※詳細はこちら
【編集後記】
いろいろな苦労を経て深センで起業。今ではロコとしても、ユーザーさんから絶大な信頼を得ているSuzukyさん。深センへビジネストリップを考えている方は、Suzukyさんのバイタリティあふれるサポートが得られれば、期待以上の発見があるかもしれませんね。